だって、君は俺の妻だから~クールな御曹司は雇われ妻を生涯愛し抜く~
「面白かったですね。まさかあそこで前作の主人公が出てくるとは思いませんでした」

 映画館をあとにしてイタリアンレストランで昼食を取りながら興奮気味に告げると、聞き役になっていた久弥さんも軽く頷いた。

「他のシリーズ作品も観させる作戦だな」

「作戦というより、それがシリーズものの醍醐味ですから」

 こういうとき、誰かと映画を観るのもいいと思う。映画の感想を言い合い、自分とはまた違う視点に物語の深みが増す。久弥さんも楽しめたのならよかった。

「なんだか続編がありそうな終わり方だったな」

「私も思いました。何年後かはわかりませんけれど、そうなったらまた観に行かないと」

 ふと口をつぐむ。仮にその日が来ても、そのとき私たちはもう一緒にいない。私はひとりで観るのか、それとも別の誰かが隣にいるのか。久弥さんは――。

 首を横に振って考えを吹き飛ばす。先を想像してもしょうがない。今目の前にある現実を大切にしないと。

 そのタイミングで料理が運ばれてきたので私は意識を切り替えた。

 食事を終えて、ウィンドウショッピングを楽しむ。昼過ぎになり、人の流れが増えてきたのもあって、さりげなく彼から手を握られたのを今度は自然と受け入れた。

「久弥さんは、なにか欲しいものはありますか?」

「どうした、急に?」

 いつもより声のボリュームが大きくなるのは致し方ない。

「もうすぐバレンタインなので」

 私の回答に久弥さんは眉をひそめた。
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