だって、君は俺の妻だから~クールな御曹司は雇われ妻を生涯愛し抜く~
「な、んで……久弥さんが謝るんですか」

「瑠衣?」

 絞り出した声は震えていて、唇をぎゅっと噛みしめる。さっきから自分の中で渦巻く感情がなんなのかはっきりさせられない。つらくて、苦しくて……胸が痛い。

「ひどい、です。ご両親がいないのは久弥さんのせいじゃないのに」

『両親のそろっていないやつが、ろくな人間になるわけがない』

 偏見もいいところだ。けれど、ああいう発言をする人を私自身たくさん見てきた。

 母が運営する施設でもそうだ。子どもたちは様々な事情で家に居場所がなくて、自分ではどうしようもない境遇に振り回されている。いつだって子どもは被害者なのに、光子さんみたいに支援する気持ちを持ってくれる人もいれば、心無い言葉をかけてくる人だっている。

 それを無心でやり過ごすのもひとつの方法だ。けれど傷つかない理由にはならない。

 両親がいなくて一番つらい思いをしてきたのは久弥さんだ。それなのに寄り添うべき肉親である伯父からあんな態度を取られるなんて。

「光子さんのお見舞いだって……久弥さんは純粋に心配しているからで……」

 最後は声にならず、感情が高ぶり目尻から熱いものがこぼれ落ちる。それをなんでもないかのように強引に指先で涙を拭った。
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