もう、秘密になんて出来ないっ!
「っ、そんなことないよ。お兄ちゃんの気のせいだよ。いい加減離れて、」
「…じゃあ、離れる代わりに恋人のふりして」
「はぁ!?」
「じゃないと離れない」
言うなり兄はわたしを抱く腕に更にちからを込める。
「わかった!わかったからっ!」
わたしの言葉が合図となって、よくやく兄が離れてくれた。
が、しかし、離れたのも束の間。今度はわたしの右手に自身の左手を重ね、その指をわたしのそれに絡めてきた。
「お、お兄ちゃっ、」
「漣」
「え?」
「『恋人』なのに『お兄ちゃん』は、おかしいだろ?」
「そっ、そんなこと言ったって、」
「みあ?」
「う…。分かったわよ!れ、漣っ」
お兄ちゃんの名前を呼び捨てにするなんて違和感しかない。けれど、
「ふはっ。みあから名前呼び捨てにされるなんてすげぇ嬉しい」
当の本人がこんなにも喜んでいるから、まぁいっか。
こうしてわたし達は兄妹で恋人ごっこをしながら買い物をすることとなった。