新そよ風に乗って ③ 〜幻影〜
『ハイブリッジって、案外、手が早そうだから気をつけなさいよ』 と言われたことがあった。
まさか……。まゆみは、結構洞察力があるし……。あれは、本当なんだろうか?
ああ。もう、どうしよう。
明良さんの顔が浮かんだ。
今更ながら、こうなったのもよく考えたら、元はといえば明良さんのせいだ。
心の中で、 『どうしてくれるのよ、明良さん』 と、叫んでいた。
高橋さんは潰した缶を持って立ち上がると、キッチンのカウンター越しにシンクの中へ空き缶を置いてまた戻ってきた。
「さて、寝るか?」
「ひっ……」
「ハッ? お前、何処から声出してるんだ?」
心臓の鼓動の速さがMAXに達し、声が上手く出せなくて、慌てて両手を顔の前で意味もなく振った。
別に、そんなに意識する事でもないのに、高橋さんのその言葉に異常に反応して姿勢まで正してしまっている。
考え過ぎだ。
慌てて大きく深呼吸しながら、左足に慎重に力を徐々に入れながら立ち上がった。
「は、はい。おやすみなさい」
慌てて高橋さんにお辞儀をして、私はこの大きなソファーに寝るんだろうと思い、またソファーに座ろうとしたが、いきなり景色が激しく動いた。
「うわっ。キャーッ」
不意に後ろから高橋さんに腰を持たれ、あっという間に抱っこされてしまった。
「あ、あの。あの……」
「何処で、寝ようとしてるんだ?」
エッ……。
嘘……でしょう?
高橋さんは私を抱っこしたまま、高橋さんの部屋の方へと歩き出していた。
う、嘘。
ちょ、ちょっと、そんな……待って。
「あ、あの、高橋さん。ちょ、ちょっと待って下さい」
でも高橋さんは、何も答えてくれない。
そして急に視界が低くなって高橋さんが少し屈むと、高橋さんのベッドに寝かされてしまった。
驚いて、もうどうしていいのか分からず飛び起きて、左足を庇いながら広すぎるキングサイズのベッドから必死に降りようとした途端、自分の動く反動で身体が左右にブワーンと揺れた。
な、何? 
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