薙野清香の【平安・現世】回顧録
『大体、どうしてあなたがここにいるのよ』
ここは清香の私的な局ではあるが、後宮の内部だ。如何に帝の秘書的ポジションにいるこの男であっても、おいそれと立ち入って良い場所ではない。
『主上と中宮さまが、お前の様子を見て来いと言ったのだ。文句があるなら二人に言え』
中将はそう言って、勝ち誇ったように笑っていた。
(くそぅ……私があのお二人に文句なんて言えるわけないじゃない)
この男はそれを十二分に理解しているのだ。清香は諦めたように小さく笑った。
『あ~~あ!宮様や主上にまで体調不良がバレてしまうなんて、とんだ失態だわ。情けないったら……』
そう呟く清香の口を、何か柔らかいものが塞いだ。清香が思わず目を見開くと、すぐ目の前に、中将の美しく整った顔が見える。ドクン、ドクンと血が騒ぐ。唇が燃えるように熱かった。
(なっ……何なの?)
激しい混乱の中、清香が真っすぐ中将を見つめる。男の瞳は楽し気に細められていた。
頬を撫でる手のひらも、抱き寄せる腕も、優しく温かい。
男が何を考えているのかは分からない。けれど清香は、そっと強張った身体の力を抜くと、ゆっくりと瞳を閉じた。
ここは清香の私的な局ではあるが、後宮の内部だ。如何に帝の秘書的ポジションにいるこの男であっても、おいそれと立ち入って良い場所ではない。
『主上と中宮さまが、お前の様子を見て来いと言ったのだ。文句があるなら二人に言え』
中将はそう言って、勝ち誇ったように笑っていた。
(くそぅ……私があのお二人に文句なんて言えるわけないじゃない)
この男はそれを十二分に理解しているのだ。清香は諦めたように小さく笑った。
『あ~~あ!宮様や主上にまで体調不良がバレてしまうなんて、とんだ失態だわ。情けないったら……』
そう呟く清香の口を、何か柔らかいものが塞いだ。清香が思わず目を見開くと、すぐ目の前に、中将の美しく整った顔が見える。ドクン、ドクンと血が騒ぐ。唇が燃えるように熱かった。
(なっ……何なの?)
激しい混乱の中、清香が真っすぐ中将を見つめる。男の瞳は楽し気に細められていた。
頬を撫でる手のひらも、抱き寄せる腕も、優しく温かい。
男が何を考えているのかは分からない。けれど清香は、そっと強張った身体の力を抜くと、ゆっくりと瞳を閉じた。