薙野清香の【平安・現世】回顧録
(くそっ、いきなり後ろに立つなよ)
思わずため息を漏らした清香の隣に、声の主こと崇臣が腰掛けた。声だけではなく、表情にも抑揚がない。いつも通り憮然とした表情で清香たちの食事を眺めている。
「ごめんね、男の人にはここのメニューじゃ、ちょっと少ないよね」
芹香が申し訳なさそうに崇臣に頭を下げる。清香はカっと目を見開くと、ブンブンと首を横に振った。
「そんなの、芹香が気にすることじゃないわよ!それに、足りなかったら後で買い足せばいいだけじゃない!」
清香が崇臣へとそう捲し立てる。けれど、清香の視線は、不自然に崇臣の瞳を避けていた。一方の崇臣は憮然とした表情を崩しはせず、真っすぐに清香を見つめている。
(何よ……何とか言いなさいよ)
例えようのない気まずさを抱えながら、清香は唇を尖らせる。未だ崇臣の顔を見ることはできなかった。
「お姉さんの言う通りだよ。崇臣、発言には少し気を付けないと、ね」
「はっ」
東條の言葉を受けて、崇臣はすぐに芹香へ向けて頭を下げた。
「そっ、そんな!私は気にしてませんから」
芹香が恐縮しながら両手を広げる。思わず清香の口からため息が漏れた。
(なんだかなぁ)
釈然としないまま、清香はカメラをカバンへ片付けた。
思わずため息を漏らした清香の隣に、声の主こと崇臣が腰掛けた。声だけではなく、表情にも抑揚がない。いつも通り憮然とした表情で清香たちの食事を眺めている。
「ごめんね、男の人にはここのメニューじゃ、ちょっと少ないよね」
芹香が申し訳なさそうに崇臣に頭を下げる。清香はカっと目を見開くと、ブンブンと首を横に振った。
「そんなの、芹香が気にすることじゃないわよ!それに、足りなかったら後で買い足せばいいだけじゃない!」
清香が崇臣へとそう捲し立てる。けれど、清香の視線は、不自然に崇臣の瞳を避けていた。一方の崇臣は憮然とした表情を崩しはせず、真っすぐに清香を見つめている。
(何よ……何とか言いなさいよ)
例えようのない気まずさを抱えながら、清香は唇を尖らせる。未だ崇臣の顔を見ることはできなかった。
「お姉さんの言う通りだよ。崇臣、発言には少し気を付けないと、ね」
「はっ」
東條の言葉を受けて、崇臣はすぐに芹香へ向けて頭を下げた。
「そっ、そんな!私は気にしてませんから」
芹香が恐縮しながら両手を広げる。思わず清香の口からため息が漏れた。
(なんだかなぁ)
釈然としないまま、清香はカメラをカバンへ片付けた。