薙野清香の【平安・現世】回顧録
「お前、案外抜けてるだろう?」


 目を丸くし、手をわななかせる清香に、崇臣が呆れたように言う。清香の頬がカッと紅くなった。


「ぬっ、抜けてなんかないわよ」


 清香はきっぱりとそう言い放った。
 これでも二人分の人生を生きているのだ。昔から、周りにしっかり者だと言われてきたし、その自負もある。


「自分じゃ見えないだけだろ」


 崇臣は珍しく、声を上げて笑った。


(そんなこと、ないのに)


 唇を尖らせながら清香はそっと、崇臣から視線を逸らした。腹立たしい想いと同じぐらい、心臓がドキドキと高鳴っている。


「まぁ、そういうことで、二人なりに俺たちを気遣ってのことらしい。俺としても面倒だが、主の期待は裏切れん」


 崇臣は清香を手招きすると、机に着くように促した。渋々ながら清香が椅子に腰かける。


「主の気が済むまで、お前を扱いてやる」

(めっ……めんどくさっっっ!)


 ニヤリと意地の悪い笑みを浮かべた崇臣に、清香は盛大なため息を吐いた。

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