薙野清香の【平安・現世】回顧録
 前世でも芹香と暁の二人は仲が悪かったわけではない。そもそも、女御同士が接触する機会など殆どないことが理由の一つだ。互いに干渉せず、波風を立てない。少なくとも、源氏物語のように、女御やその女房が嫌がらせをし合うなんてことは、東條の後宮ではなかった。

 それに暁が入内した頃の芹香は、親族の後ろ盾も失って、かなり心もとない身の上になっていた。そんな状態で、もう一人の正妻と会うなど、心苦しいに違いない。だから従者たちは、できる限り二人が接触しないよう、気を揉んで来たのだ。

 それから、前世の芹香が若くして亡くなった後。彼女の子を養育したのは、他でもない、前世の暁だったらしい。
 当然、芹香がそんなことを知る由もないが、魂は彼女に親しみを覚えているのかもしれない――そんなことを清香は思った。

 ふと見ると、紫は大層不服そうな表情を浮かべ、芹香と暁の二人ではなく、清香のことを睨んでいた。


(ホント、ブレないな、この人も)

 清香はため息を吐きながら、手を取り合って笑っている芹香と暁、それからそんな二人を嬉しそうに見守っている東條の三人を見つめた。


(まぁ、良いか。芹香が嬉しそうだから)


 清香は困ったように笑いながら、三人の元へ向かった。


「さっ、じゃぁ写真撮ってもらいましょうか」

「うん!」


 そう問いかけると、芹香が嬉しそうに返事をする。東條もコクリと頷いた。

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