薙野清香の【平安・現世】回顧録
 それから二人は、何事もなかったかのように他のメンバーと合流した。崇臣と紫が、何やら探るような目を向けてきたが、今度は上手く平静を装えた。少なくとも清香はそう思っている。


「ありがとうね、奏君!」


 紫が媚びるような笑みを浮かべながら、東條に擦り寄っている。ウットリと頬を染め、瞬きを繰り返すその様は、清香から見てあまりにも見苦しい。


(……って!暁と東條をくっつけたいんじゃなかったんかい!)


 清香はそんな紫を睨みながら、ついつい心の中で叫び声を上げた。


(いや、マジか……本気で理解できない)


 仕えている女御のお零れで、帝のお手付きになりたい……そんなことを思う女は多い。身分から女御には上がれずとも、更衣や典侍として帝の側室になる。それは女として最高の栄誉だし、家の出世にもつながる。そう考えるらしい。


(お仕えしている大事な主人と、寵を競うなんてバカじゃないの)


 清香の脳裏にキラキラと期待の眼差しを東條へと向ける、浅はかな女房たちの姿が浮かびあがる。今の紫の姿は、そんな女房達とピッタリ重なるのだ。


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