薙野清香の【平安・現世】回顧録
「浅はかだと思うだろう」


 崇臣が憮然とした表情で清香に尋ねる。清香はコクコクと頷きながら唇を尖らせた。


「えぇ。全くその通りよ」


 清香の返事を聞くと、崇臣はクスッと小さく笑った。朝、必死でセットをした、清香のショートヘアが乱される。


(それ、調子狂うからやめてほしいんだけど……)


 崇臣の癖なのだろうか。前世でも現世でも、ふとした時に、崇臣は清香の頭を撫でてくる。頭に感じる大きな温もりは、いつも清香を乱した。けれど、そうと口に出すことは、何故だか憚られた。


「さぁーー!水分も補給したことだし、アトラクション制覇目指しましょーーっ‼」


 突如上がった芹香の朗らかな声に、清香は思考の渦から解放される。


(いっ、いけない。私ったら、さっきから考えごとばっかり……)


 ペチペチと頬を叩きながら、清香は顔を上げた。
 芹香はアトラクションを見上げながらキラキラと瞳を輝かせ、その隣で暁がコクコクと頷きながら笑っている。


(芹香ったら……当初の目的、すっかり忘れてるわね)


 元々今回のダブルデートは、清香と崇臣のために企画されたものだったはずだ。
 けれど今や、ダブルデートという体裁すら崩れ、遊園地を楽しむ学生グループと、その引率者という図が出来上がっている。
 とはいえ、26歳の崇臣も浮いているという感じではなく、ごく自然に溶け込んでいるのが悪くはない。


(まぁ、私は何だって良いんだけど!)


 清香はこっそり微笑みながら、先を急ぐ芹香たちのあとを追いかけたのだった。
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