別冊・ダブルブルー
「そうだなぁ…」


一歩引いて、私の全身を眺めた青さん、は。


あ。いいこと、思い付いた。


ちいさくつぶやいて、両手を自分の首の後ろに持っていった。


かちゃ、かちゃ、と、ほんの僅かな金属音がしたのち、青さんの手のひらには今しがたまで、青さんが着けていたネックレスが握られている。


それをおもむろに、私の首もとに当ててみせた。


「ん、ほら。ぴったり、だ。蒼ちゃんに貸してあげる」


そのネックレスは、青さんが初めて映画の主演をした記念に、自分で買ったものだと聞いていた。


細い細い、ゴールドの鎖に重すぎない華奢なコインが付いている。

プライベートや公の場問わず、青さんが、よくつけているネックレス、で。


「…こんなに大切なもの、貸してもらえません!」


そんな私の本気の抗議、にも。


いいから、いいから。


有無をいわせずに、私の首もとへネックレスをあてがった、青さん。


私の首の後ろにまわった、青さんの手元が一瞬、止まった。


でもそれは、ほんの一瞬のことで。


「ほら、やっぱりぴったんこ、だねぇ」


微笑むその目元に、瞬く間に見とれた。






< 36 / 79 >

この作品をシェア

pagetop