ひと駅分の彼氏
しかしこの時間帯はすぐに席が埋まってしまう。


サラリーマンが立ち上がった数秒後には違う人が座っていた。


また空間が狭くなる。


私は気が付かれないようにため息を吐き出して、視線を下げた。


少し首をかしげて隣に座った人の足元を見る。


青いスニーカーにジーンズをはいている。


スニーカーのサイズ感からして男性みたいだ。


また男性か。


せめて女性なら安心できるのに。


そう思って少しだけ表情がひきつる。


男性の誰もが悪い人間じゃないことはとっくの前に理解しているけれど、ついそんな風に考える。


きっと男性からしても、隣が同じ男性なら気をつかうことがないのにと、ため息をついていることだろう。


そう考えると少し肩の力が抜けてネックレスから手を離した。


同時にドアが閉まる音がして電車がゆっくりと走り出す。
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