甘すぎる小悪魔に見つかったなら。
その後の帰り道,十和は何も言わなかった。
話しかけるような雰囲気でもなくて,ただ斜め後ろを着いていく。
「あゆ,隣,あるいて」
「え? あぁ,ごめん」
「もしかして,早い?」
「ううん,全然」
気にしてくれてありがとう。
ようやく交わした言葉に,少しだけ息がしやすくなった。
「あゆ,緊張してる?」
どきんと,まるで図星のように鳴る心臓。
ばかじゃないの,私。
これじゃあ,本当に,肯定してるみたい。
どうして?
2人で歩いてるだけなのに,緊張なんてするはずないのに。
「どうして,笑ってる?」
十和,そんなにおかしかった?
何だか悔しい気持ちがわき上がって,私は十和を上目で見る。
「いつみても,あゆは可愛いね。もう駅着いちゃうけど,電車間に合う?」
「まっ……にあう。はず。丁度? くら,い」
私が答えると,十和は残念そうな顔をした。
「あゆ,ゆっくり歩いてもいい?」
「別に,なんでも」
十和は,勘違いや誤解を生む天才なのかもしれない。
別れを惜しんで貰えるだけの存在なのかなって,嬉しくなってしまう。