スキがない総長の大胆な溺愛
*優利*
怪我をしたあの日。
蒼羽に庇われたのに、
蒼羽に助けてもらったのに。
蒼羽に口止めされているせいで、それを明里に伝えることも出来ず、
そして勘違いをした明里は、なんと蒼羽の家に荷物を持って潜り込んだ。
「はぁ…恨むぞ、夜野…」
あの夜の事を話す事が出来たら…。
蒼羽が俺を襲ったんじゃなくて、逆に助けてくれたのだと話せたら…。
明里は「復讐」をやめて、アパートに帰ってくるのに。
帰ってこれるのに…。
それを言えないばかりに、俺の隣の部屋は尚も空っぽのまま。
「くそ…!」
夜野、助けてくれてありがとう。
だけどな、お前が俺を助けてくれたように、
俺にも助けたい奴がいるんだよ。
「………やるか」
とある決心をして、重い腰を上げる。
そして早退したため姿のない明里の教室を覗いて「夜野はいるか」と、休憩時間に夜野を呼び出した。
*優利*end