スキがない総長の大胆な溺愛
「逃げる…?」

「そう。あの窓から」



廃墟の出入り口は、暴走族によって塞がれている。

窓も鉄格子があって、外には出られない。


だけど、ただ一つ。


錆びて朽ち果てた鉄格子がある。

窓から半分以上外れていて、蹴れば簡単に壊れて落ちそうだ。そして窓から脱出する。

蒼羽は、優利にやれと命令した。



「夜野、お前は?一人でここに残るのか…?」

「うん。片付けるけど?」



まるで「掃除をする」と言わんばかりの軽い返事に、思わず優利はポカンとする。



「この人数を一人でか…?」

「さっきも一人で戦ってたんだけど…見てなかったの?」

「ごめん、考え事していて…」



素直に謝る優利を見て、蒼羽は今度こそため息をついた。



「君はさ、もう少し暴走族の世界を知った方がいいよ」

「は?どういう、」
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