好きな人の婚約が決まりました。好きな人にキスをされました。
「陛下? あの……」

「――――君の父親はひどい人だな。メリンダを――――君を放って置くだなんて、本当に許しがたいことだ」


 悔しい。
 苦しい。
 申し訳なさのあまり、ステファンの声が小刻みに震える。


 メリンダはステファンを恨んでいるだろうか? 彼女を無理やり手籠めにしたことを。こんな生活を余儀なくされたことを。
 もしもステファンが彼女を見初めなかったら、彼女は男爵家の令嬢として、ある程度満ち足りた生活が送れただろう。普通に結婚をし、普通に子を育み、もっと長生きができたに違いない。


 それに、一人で子供を育てるのは、あまりにも心細かっただろう。経済的にも不安だったろうし、本当に負担が大きかったに違いない。


 ステファンだって本当は、メアリーの成長を見守りたかった。何不自由ない生活を送らせたかった。もしもメアリーの存在を知っていたなら――――知らせてもらえていたなら――――いや、今更何を言っても仕方がない。

 それでも、ステファンは全てのきっかけを作った過去の自分が許せなかった。


「そんなことはありません!」


 けれどそのとき、メアリーが静かに声を上げた。


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