好きな人の婚約が決まりました。好きな人にキスをされました。
「……すまなかった。
メリンダを失ったことがあまりにも残念で――――悲しい。我が国は本当に惜しい人を亡くしてしまった」


 泣いていることを必死にごまかしながら、ステファンが言う。
 メアリーはほんのりと瞳を細めつつ「ありがとうございます」と口にした。


「陛下にそんなふうに言っていただけて、母もきっと喜んでいると思います」

「――――そうだろうか?」

「もちろんですわ。
生前、母はいつも申しておりました。『わたしたちが幸せに暮らせているのは、陛下が国を守ってくださっているからなのよ』って。母は陛下のことを敬愛しておりましたもの」


 メアリーが微笑む。
 それはこの18年間、ステファンがずっと求め続けていた言葉だった。


(届いていた)


 ステファンの想いは、愛情は、ちゃんとメリンダに届いていたのだ。
 嬉しかった――――あまりにも。
 ステファンはそっと身をかがめ、メアリーの顔を覗き込んだ。


「そうか……メアリーは今、幸せかい?」


 目頭が熱い。心が震える。
 けれど、ステファンは尋ねずにはいられなかった。


「もちろんです! 国が平和で、豊かで、周りのみんなも優しくて――――こうしてジェラルドとも結婚もできましたし。毎日が満ち足りていいて、本当に本当に幸せです!」


 メアリーが笑う。メリンダによく似たとても幸せそうな表情で。
 ステファンは少しだけ目を見開き、それから静かに目を瞑った。


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