もう恋なんてしないと決めていたのに、天才外科医に赤ちゃんごと溺愛されました
 蒼史さんの手がひどくこわばっているのが見えた。

 同じ医者としては尊敬できるのに、人としては軽蔑すると言い切れる両親との時間は、たとえ十分に満たなくても彼の心を疲弊させたようだ。

 今まで知らなかった蒼史さんの内側を覗き見た気がして、無意識に手を伸ばす。

「……なんだ、いきなり」

 気づけば私は彼の手を両手で包み込み、握りしめていた。

「蒼史さんは違いますよ」

 そう言うと、蒼史さんが軽く身体を起こした。

「違う? なにが」

「温かい家庭……築けると思います。蒼史さんなら」

 どう伝えたらいいか言葉を考えながら発するせいで、なんだか片言になってしまう。

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