もう恋なんてしないと決めていたのに、天才外科医に赤ちゃんごと溺愛されました
「うちのような家がほかにあるのなら、そこで育てられた人間とは話が合いそうだ」

 蒼史さんは車を発進させずに、背もたれに身体を預けて低い天井を仰いでいる。

 表情は普段通り、喜怒哀楽のどれも見あたらない。

 ただ、彼が両親に複雑な思いを抱いているのはわかった。

「誤解のないように言っておくが、両親が嫌いなわけではない。人として軽蔑しているだけだ」

「軽蔑なんて、そんな」

「医者としては尊敬している。俺もそれなりに経験を積んだが、まだ彼らの域には達していない。だが、どんなに難しい心臓移植のオペを成功させても、ふたりはいい親ではなかった。それだけは間違いない」

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