もう恋なんてしないと決めていたのに、天才外科医に赤ちゃんごと溺愛されました
 そんな声が聞こえて振り返ると、優史が不思議そうな顔をしている。

 クッキーはもう食べ終えたようで、手についた粉をせっせと口に運んでいた。

「ううん、元気だよ。どうして?」

「こわいかお」

 無邪気に指摘されてバックミラーを覗き込む。

 秘密を明かそうとしていたからか、ひどくこわばった表情の自分と目が合った。

 優史が怖い顔をしていると言うのも仕方がないかもしれない。

「クッキーたべる?」

「後で食べようかな。ありがとうね」

「ユウくんも」

「ユウくんはもういっぱい食べたでしょ? 夜ご飯を食べられなくなっちゃうから、また明日だよ」

「ないない?」

「うん、ないない」

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