もう恋なんてしないと決めていたのに、天才外科医に赤ちゃんごと溺愛されました
「やだ」

 優史が顔をしかめるのと同じタイミングで蒼史さんが戻ってくる。

「すぐに病院へ行かなければならないことになった。悪いがタクシーで帰ってくれるか」

「わかりました。大丈夫ですか?」

「……ああ」

 自分がなにに対して大丈夫かと尋ねたのか、私もよくわかっていない。蒼史さんがどう受け取ったのかも。

 車を降りて手早く優史をチャイルドシートから下ろして抱き上げる。

 優史は自由を得たのがうれしいらしく、すぐどこかへ歩き出そうとした。

「おさんぽ!」

「お散歩するなら、ママとおてて繋ごうね」

「いやー!」

「だめ。嫌じゃないの」

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