もう恋なんてしないと決めていたのに、天才外科医に赤ちゃんごと溺愛されました
 柚子が真実を言えなかったのは、俺が逃げ続けたせいだ。

 大事な話があると言われ、彼女から別れを告げられるのが嫌だった。

 再び別れたら、今度こそ永遠に彼女を失ってしまうから。

 今さら悔やんでも遅いのに後悔がいくつも浮かんでくる。

 そんな俺の目の前で手術室の扉が開き、柚子が室内へ運ばれていく。

 医者としてありえないことに、俺はしばらく彼女が消えていった部屋の前で立ち尽くしていた。新人に偉そうな態度で接しておきながら、いったいなにをやっているのか。

 普段の冷静さを取り戻すためにゆっくり深呼吸する。

 俺は、医者だ。

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