もう恋なんてしないと決めていたのに、天才外科医に赤ちゃんごと溺愛されました
 彼女が最初から優史だと伝えていれば、俺もこれほど疑問は覚えなかった。

 名前を偽っていたとは気づかず改めて確認すると、彼女の子供には俺と同じ『史』の字が入っていたのだ。

 ほぼ確信に至っても俺は柚子に優史の父親について聞けなかったし、伝手を使ってDNA鑑定をしようともしなかった。

 あの子が俺の息子だと確定したら、俺はもう柚子も優史も離してやれなくなる。

 冷たい家庭で両親の愛情を知らずに育った俺が家族を持つべきではないのに。

「俺のせいだ」

 手の中にある柚子のぬくもりは心もとなかった。

 彼女の手がこんなに冷たくなる日が来るなんて知りたくなかったし、信じたくない。

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