もう恋なんてしないと決めていたのに、天才外科医に赤ちゃんごと溺愛されました
 先ほどの新米医者のように答えを求めるも、教えてくれる人はどこにもいない。



 しかし、いつまでも自分と向き合っている暇はなかった。

 事故によって運ばれてきた患者の中で、もっとも重傷だったのが柚子だったからだ。

「胸部が強く圧迫された際、大動脈を損傷したと思われます」

 隣で説明をされてもうまく頭に入ってこない。

「外傷性大動脈解離か」

 医者としての俺が、八柳蒼史としての俺を抑え込んで応える。

「かなり危険な状態です。ですが田淵先生はほかの患者さんの手術中で……」

 執刀できる医者が、よりによってこのタイミングで空いていない。

「わかりました。私が執刀します」

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