もう恋なんてしないと決めていたのに、天才外科医に赤ちゃんごと溺愛されました
 そう言うと、少し驚いた顔をされる。

「奥様と伺いましたが、その……ほかの先生を待った方がいいのでは」

 言葉を慎重に選んだ看護師から聞かれるも、家庭よりも医者であることを選んだ『俺』は考える前に口を開いた。

「お気遣いありがとうございます。ですが、身内の手術で動揺するような医者ではないつもりです」

 俺は両親と同じ医者だ。

 たとえ柚子や優史が患者でも、医者のままでいられる。いや、そうでなくてはならない。

 ここで医者として動けないなら、なんのために柚子を遠ざけ苦労をかけてきたのか。

「どちらにせよ、田淵先生を待っている時間はないでしょう」

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