もう恋なんてしないと決めていたのに、天才外科医に赤ちゃんごと溺愛されました
 蒼史さんにだけは言えない想いを呑み込み、彼を見つめる。

 てっきり私の知る冴え冴えとした眼差しを返されるのかと思いきや、彼の瞳の奥に激しい光が宿っているのが見えた。

 まるで一夜限りの思い出を求めたあのときのように。

「す──みません、ちょっと長話をしてしまいましたね」

 蒼史さんがそんな目で私を見るなんて気のせいに決まっている。

 現に、もう一度彼に目を向けると、予想通りの冷ややかな光があった。

「そろそろ戻らないと。久しぶりにお会いできてうれしかったです」

 これ以上蒼史さんの傍にいてはいけない気がして、その場から逃げ出そうと背を向ける。

「柚子」

< 58 / 281 >

この作品をシェア

pagetop