もう恋なんてしないと決めていたのに、天才外科医に赤ちゃんごと溺愛されました
 もしも蒼史さんから指輪はカモフラージュだと聞かなければ、私の心はひどくざわついていただろう。いや、すでに彼女が親しみを込めて彼を呼んだだけで苦い感情が生まれている。

「……美里か。病院には来るなと言わなかったか」

 意外にも蒼史さんは女性に対して厳しかった。

「いつまでも君に付き合っている暇はない」

「私だって早く話をつけちゃいたいの。……あれ。その人、誰?」

 彼女の視線はお世辞にも気持ちのいいものとは言えなかった。

 まだ蒼史さんに掴まれていた手を引こうとすると、逆に引っ張られる。

「蒼史さ──」

「君が会わせろとうるさかった妻が彼女だ。これで満足か」

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