もう恋なんてしないと決めていたのに、天才外科医に赤ちゃんごと溺愛されました
 この子はもう人の顔と名前が一致する年齢だ。もしも生活の中に蒼史さんが入ってきたら、すぐに彼を覚えるに違いない。

「どうしようね」

 答えはないとわかっていながら、優史に話しかける。

 中途半端に握られた手に指を差しだすと、きゅっと握られた。

 そのぬくもりはこの子が生まれたときに感じたものとまったく同じで、自然と過去を思い出してしまう。



◇ ◇ ◇



 大和が事故に遭った後、私は入院している病院へ頻繁に足を運んだ。

 弟の執刀医として出会った蒼史さんは非常に容姿の整った魅力的な男性だったけれど、いつも気難しい顔をしていたから怖い人なのかと思っていた。

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