もう恋なんてしないと決めていたのに、天才外科医に赤ちゃんごと溺愛されました
 どうやら違うらしいと知ったのは、普段よりも遅い時間に大和のもとを訪ねた日のことだ。

「先生。俺の脚、もうだめなんですか」

 私の前では一度も弱音を吐かなかった大和の声が聞こえ、カーテンで仕切られたベッドへ向かう足が止まる。

 平気なのかと尋ねる私に、大和は毎回大丈夫だと笑って返した。

 だけど大丈夫なわけがなかったのだ。自分の不注意が原因でもないのに、二度と歩けないかもしれないと言われ、どれだけ不安を抱えていたのだろう。

 姉として気づいてあげられなかったのが悔しくて、申し訳なくなる。

「期待は持たせなくていいです。もうだめなら、今から心の準備をしておきます」

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