もう恋なんてしないと決めていたのに、天才外科医に赤ちゃんごと溺愛されました
 大和は昔から小言の多い弟だったけれど、まさかそんなにもいろいろと私に言いたいことを抱えていたとは知らなかった。

「俺が動けなくなったら、きっと姉は一生俺のために生きてしまうんです。だから先生、俺を治してください。神様は信じてませんけど、先生は信じてます。お願いします」

「……できる限りを尽くします。必ず」

 盗み聞きしているのが申し訳なくなってそっと病室を出る。

 廊下を少し行った先にある共有スペースの椅子に座り、飲みたい気持ちはなかったけれどオレンジジュースを買った。

 酸味の強いジュースを喉に流し込み、聞いてしまった本音を反芻してため息をつく。

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