もう恋なんてしないと決めていたのに、天才外科医に赤ちゃんごと溺愛されました
 親としては尊敬していない、と聞こえたのはさすがに気のせいだろう。

「なんにせよ、大和さんは織部さんにもう少し自分を優先してほしいそうです。たしかに伝えましたからね」

「はい」

「そろそろ病室へ向かっても大丈夫でしょう。貴重なお時間をありがとうございました」

「こちらこそお忙しいのに気遣ってくださってありがとうございます」

 もう少し彼と話していたい気持ちを抑えてお礼を言う。

 椅子から立ち上がる際、貸してくれた手は大きくて頼もしかった。

 蒼史さんを意識しないように気をつけながら、仕事に戻る彼を見送って、大和がいる一番奥の病室へ向かった。

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