もう恋なんてしないと決めていたのに、天才外科医に赤ちゃんごと溺愛されました
 幸い、蒼史さんは私のわざとらしすぎる恋人アピールのおかげで意図を察したようだった。

「悪い。少し誤解があったようでな」

 ぽかんとしている女性の前で、蒼史さんが私を抱き寄せる。

 演技だとわかっていてもこれは心臓に悪い。

 彼の口もとにうっすらと浮かんだ笑みは甘く魅力的だし、髪をなでてくる手も私を愛おしいと思っているのがはっきりわかるくらい優しい。

 もしかして演技ではないんじゃ? と錯覚しそうになりながら、応じてくれた彼の演技に合わせて私も広い背に腕を回した。

「君の気持ちに応えられない理由がわかっただろう。俺にはもう、心に決めた人がいる」

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