もう恋なんてしないと決めていたのに、天才外科医に赤ちゃんごと溺愛されました
 幾分穏やかさを取り戻した声は、女性にとって逆に残酷だっただろう。

 彼は愛しい人が現れたことによる変化を態度だけでなく声でも表現しきったのだ。

「そ……んな……」

 目の前の光景が信じられなかったらしく、女性がわっと顔を覆ってその場を走り去る。

 ドラマの撮影だと言われても納得するほど、演技がかった逃げ方だった。

「……さて」

 蒼史さんが私を抱いていた腕を解き、甘い笑みを引っ込めて苦笑に変える。

「助かりました、織部さん」

「ほかにやり方が思いつかなくてすみません」

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