おとなり契約結婚〜幼馴染の小児科医が推しを盾に結婚を迫ってくる件〜

 半強制的に添い寝を決められてしまった千春は、入浴を済ませると香月の部屋に向かった。扉の前で立ち止まり深呼吸する。これから何が起ころうとも、後悔しないと心に決める。

 千春が部屋に入ってくると、スウェット姿の香月は読んでいた本を閉じサイドボードの上に置いた。

「ちゃんと髪は乾かせたか?」
「うん」

 身支度に時間が掛かっていたのは勝手の違う洗面所に手間取っていただけではない。
 もしかしたら今夜……という期待と不安で揺れる心を落ち着けるためだ。

「じゃあ、寝るか」
 
 香月はそう言うと布団の中に潜り込んでいった。
 寝るといっても……まだ夜の十時だ。
 まさか、本当に寝るつもり?

「香月くんはいつもこんな時間に寝てるの?」
「まさか。今日は引っ越しの手伝いでちぃも疲れてるだろ?こういう時はさっさと寝るに限る」

(つまり、今日はなにもしないってこと……?)

 千春は何度目かわからない肩透かしを食らい脱力した。ここまでくると自分に女性としての魅力がないのではないかと疑いたくなってくる。

 二人はセミダブルのベッドに身を寄せ合った。
 リモコンが操作され、照明が暗くなる。オレンジ色の豆電球の光が、部屋の輪郭を曖昧にしていく。

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