おとなり契約結婚〜幼馴染の小児科医が推しを盾に結婚を迫ってくる件〜
(こんな世界があるなんて……っ!)
眩いライト。アップテンポの音楽。張りのある歌声に、心躍るストーリー。舞台の上で役を演じるコガネジェンヌ達はみな生き生きとしていた。千春は懸命に彼女達の生き様を目に焼き付けた。
黄金塚歌劇団は「これだ!」という天啓を千春にもたらしたのだ。
千春は黄金塚歌劇団の虜になった。もう無我夢中だった。珠江にお願いして過去の公演のDVDを貸してもらい、プレーヤーが壊れるまで何度も見返した。貯めていたお年玉はすべてグッズに消えた。働くようになってからは、お給料を惜しげもなくつぎこめるようになり、まだまだ熱は冷めそうにない。
あの時、黄金塚に出逢わなければ千春はどうなっていたことだろう。
(まさか、今更香月くんのベッドで寝ることになるとは……)
千春は心の中で独り言ちた。
十六年ぶりに寝る香月のベッドは昔よりも窮屈だった。千春が大きくなったからなのか。はたまた、隣に香月がいるからか。
眠れないかもというのは余計な心配だった。
香月の言うように朝から動きっぱなしの身体は自分で思うよりも疲れていて、休息を欲していたようだ。
その夜、千春は香月の体温と爽やかな香りに包まれながら寝入ってしまった。