おとなり契約結婚〜幼馴染の小児科医が推しを盾に結婚を迫ってくる件〜

(なんかもう……一周回って腹が立ってきたかも!)

 新妻がこんなに準備万端で待ち構えているのに、香月は据え膳を食わぬどころかいつものんびり寝ているだけ。

(食べてよ!……こっちは誘惑してるんだから!)

 なんと罪作りな男だろう。

 香月は昔からそういうところがある。
 鬼のようにモテまくるくせに、自分が周りからどう思われているか無頓着なのだ。
 その結果、恋の屍になったのは一人や二人の話ではない。

「ごめん、ちぃ。ボールペンのインクがなくなったんだけど、新しいやつって……っいて!」

 千春は椅子を回転させながら、診察室側からひょいと現れた香月の向こう脛を蹴ってやった。
 もちろん、わざとだ。

「新しいポールペンですね。こちらどうぞ」

 備品が収納されている棚からボールペンを取り出し、にっこり微笑みながら香月に手渡す。

「なんか怒ってる?」
「別にー」

 脛をさする香月を見たら少しばかり溜飲が下がった。
 少しは女心を勉強して欲しい。

< 108 / 171 >

この作品をシェア

pagetop