おとなり契約結婚〜幼馴染の小児科医が推しを盾に結婚を迫ってくる件〜
(なんかもう……一周回って腹が立ってきたかも!)
新妻がこんなに準備万端で待ち構えているのに、香月は据え膳を食わぬどころかいつものんびり寝ているだけ。
(食べてよ!……こっちは誘惑してるんだから!)
なんと罪作りな男だろう。
香月は昔からそういうところがある。
鬼のようにモテまくるくせに、自分が周りからどう思われているか無頓着なのだ。
その結果、恋の屍になったのは一人や二人の話ではない。
「ごめん、ちぃ。ボールペンのインクがなくなったんだけど、新しいやつって……っいて!」
千春は椅子を回転させながら、診察室側からひょいと現れた香月の向こう脛を蹴ってやった。
もちろん、わざとだ。
「新しいポールペンですね。こちらどうぞ」
備品が収納されている棚からボールペンを取り出し、にっこり微笑みながら香月に手渡す。
「なんか怒ってる?」
「別にー」
脛をさする香月を見たら少しばかり溜飲が下がった。
少しは女心を勉強して欲しい。