おとなり契約結婚〜幼馴染の小児科医が推しを盾に結婚を迫ってくる件〜
「診察券と保険証、乳児医療証をお預かりしますね」
千春は決まり文句を口にしながら親御さんから必要な物を受け取り、来院情報をパソコンに打ち込んでいった。
「『よしだたいよう』くん、キリンさんの診察室へどうぞ」
診療開始時間になると君代から名前を呼ばれた患者とその保護者が診察室に次々と吸い込まれていく。洋介と香月にはそれぞれに診察室がひとつずつあてがわれている。洋介はキリンで、香月はライオンだ。
診察が終われば処方箋と領収書を印刷し、お会計を済ませる。
診察する医師が二人に対し、受付業務はひとり。どれだけ千春が頑張ろうと、朝一番のこの時間帯は診察が終わった患者を待たせてしまうこともあって申し訳ない。
「おはよう、千春ちゃん」
十時になると千春と同じ医療事務のパート職員、青井由里がやって来る。
「今日もすごいね!洋介先生と香月先生は人気者だね~」
「ははっ。子供達からの人気はいまいちですけどね」
春先のこの時期は花粉症の症状が出たり、気候や保育環境の変化などで風邪や発熱などが多くなる。予約をせずに飛び込みでやってくる患者も多かった。
その後も患者は途絶えることなくやって来て、午前の診療時間である午後一時ギリギリまで診察は続いていく。