おとなり契約結婚〜幼馴染の小児科医が推しを盾に結婚を迫ってくる件〜

 手料理の凄まじい効果がわかったのは朝食を済ませ、食器を洗っている最中のこと。
 
「ちぃ」
「ん?」

 水切りに皿を乗せていた千春は、香月から声を掛けられ顔を上げた。
 香月はカウンターに手をつき、千春の視界を塞ぐように腰を屈めた。ちゅっと羽のように軽いものが唇に当たる。

「美味かった。また作って」

 ……それが香月の唇だとわかるのに五秒はかかった。

(ひ、ひゃあーーーー!)

 まるで新婚夫婦のような甘いやりとりに、千春は心の中で絶叫した。
 なんて最高のご褒美なんだろう!
 映画やドラマで見たことのある素敵なキスが毎回もらえるなら俄然張り切ってしまう。
 千春はダイニングテーブルを拭いている香月の背中を恨めしげに睨んだ。

(キスひとつでたらしこむなんて本当にワルイ人!)

 香月を籠絡するはずだったのに、逆に千春が香月の手のひらの上で転がされていた。

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