おとなり契約結婚〜幼馴染の小児科医が推しを盾に結婚を迫ってくる件〜

「加賀谷さんの読み聞かせ、すごく個性的で面白かったよね?俺、爆笑したもん」

 仙堂は思い出したようにククッと笑いを噛み殺した。
 毎週、読み聞かせの時間に多目的ルームにやってくるのは大体同じ面子だ。
 絵本の読み聞かせなど、とうの昔に飽きている。露骨に興味がない態度を取られるのもなんだか悔しくて、千春はいつも途中から勝手に話を付け加えて、突拍子もないオチに改変するようになった。
 今思えば、子ども相手にムキになって大人気ないなと思う。絵本の作者にも申し訳ないことをした。
 
「忘れてください……」
「忘れられないよ。子供達、めちゃくちゃ楽しそうだったからさ。特に桃太郎が鬼と協力して鬼ヶ島を観光地化するところなんて最高だったよ?」

 唯一の救いは子供達の頭が柔軟で、千春の作った破茶滅茶なオチをすんなり受け入れてくれたことだ。
  
「だからさ、クリニックで再会した時に割と運命感じた。香月先生に先を越された時は、やられた!って後悔した」
「運命……ですか?」
 
 運命を感じたなんてセリフ、テレビと漫画以外で実際に使われているのを初めて聞いた。
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