おとなり契約結婚〜幼馴染の小児科医が推しを盾に結婚を迫ってくる件〜

「本当は何日もかけてじっくり慣らしてやりたかったけど……。ごめんな。もう我慢の限界」

 何日もかけて慣らされたら、今度こそもどかしさで息絶えてしまう。早く、溺れるほどの愛で満たしてほしい。

「力、抜いて……」

 わざわざ言わなくたって、えも言われぬ虚脱感に支配された身体には力が入らない。
 千春は己の心が望むまま初めてを香月に捧げた。初めては痛くてたまらなかったけれど、ひとつになれた喜びの方が遥かに優った。

「お願い……私だけを見ていて。私だけの香月くんでいて」
「ずるいなあ……ちぃは。これ以上、好きにさせてどうしたいんだ?」

 千春への執着を裏づけるように口づけが深まっていく。

「ちぃは『特別』だ。ぐずぐすに甘やかして、たくさん可愛がってやる。一生俺だけのものだ」

 あれほど嫌だった特別という言葉が、七色の輝きを放つ。極上の音色を聞いたかのように鼓膜が喜んでいる。
 香月が度々口にしていた『特別』とはそういう意味だったのかと、すべてが腑に落ちた。

「ちぃ、愛してるよ」

 香月の口から愛の台詞がいくつも紡がれていく。もう疑ったりしない。
 香月にとって千春は確かに『特別』だった――……。

< 165 / 171 >

この作品をシェア

pagetop