おとなり契約結婚〜幼馴染の小児科医が推しを盾に結婚を迫ってくる件〜


 休診日は一日中ゴルステを見ると決めている千春だが、時には黄金塚以外の用事で外出することもある。

「これでいっか」
 
 千春はクローゼットの中から着脱のしやすい前開きのブラウスを選び着替え始めた。着替えが終わると、隣の家の香月に悟られないように警戒しながらダッシュで家を出る。

 千春が向かったのは最寄駅を挟んだ反対側にある聖蘭医科大学附属病院だ。家からだと歩いて二十分ほど。車なら五分ぐらいだ。
 日傘を差し、通い慣れた道をスタスタと歩いていく。

 空に真っ直ぐのびる幾つもの白亜の建物の病棟は、今日も訪れる者を威圧するように聳え立っていた。
 ここに来ると、否応がなしに自分が普通の人とは違うんだと自覚させられる。

 人の流れに身を任せるように正面入口から建物の中に入っていく。ずらりと並んだ受付の機械に診察券を入れると、受付番号の書かれたレシートが発行される。
 レシートを持った千春が向かったのは西棟にある循環器内科だった。

 朝一でやって来たにも関わらず、診察室の前は患者でごった返している。大勢の人間が受付番号片手にディスプレイの前で待つ光景は異様だ。千春は黄金塚劇場とは似ても似つかない固いソファに腰掛けた。

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