おとなり契約結婚〜幼馴染の小児科医が推しを盾に結婚を迫ってくる件〜
(やっばり苦手だな……)
消毒液の匂い。リノリウムの白い床。看護師が運ぶ医療用ワゴンの金属音。遠くから聞こえる救急車の音。その全てが現実の重さを千春に教える。
自分の受付番号と同じ番号がディスプレイに映し出されると、千春は待合室のソファから立ち上がり四番の診察室の扉をノックした。
「どうぞ」
「失礼します」
小豆色のスクラブを着た壮年の男性医師は千春を見ると、ニコリと笑った。
「半年ぶりだね、千春ちゃん。調子はどう?」
「いつも通り元気です。佐久間先生は少しお痩せになりました?」
「ははは。最近筋トレにはまってね。すっかり頬の肉が落ちたよ」
世間話が終わったところで、検査用のガウンに着替えベッドに横になる。胸元にゼリーが塗られ、専用器具が当てられていく。
佐久間が行っているのは心エコー検査と呼ばれているものだ。主に心臓の血管や機能を調べるためのものだ。
検査は三十分ほどかけて入念に行われた。
「はい、終わりです」
看護師にゼリーを拭き取ってもらうと、千春は身体を起こし身支度を整え、回転椅子に座り直した。
「今回の検査結果も特に問題ないね。君の心臓は今日も元気だよ」
「ありがとうございます」
検査結果を聞いてホッと胸を撫で下ろす。毎度のことながらこの瞬間が一番緊張する。