おとなり契約結婚〜幼馴染の小児科医が推しを盾に結婚を迫ってくる件〜
「今日はどうした?」
「結婚のご挨拶に……」
「それなら香月からさっき聞いた」
「え!?香月くんも病院に来てるんですか!?」
及川は香月が持って来たと思しき論文をバサバサと団扇代わりにして煽いだ。
「あいつ、頼んでた論文の和訳をわざわざプリントアウトして持って来やがった。データだけでいいのに。医局にいるからお前さんが来たら帰る前に声かけろって伝えてくれだとさ。俺を体のいい言い訳に使うなって過保護の旦那に言っとけ」
「ご迷惑おかけしてすみません……」
千春を迎えにくる言い訳に使われたことは、及川にもバレていた。よもや隠す気もなかったのかもしれない。
不調法者は香月のはずなのに、なぜか千春が代わりに謝罪させられる。夫の不手際は妻の責任というやつだ。まあ、責任の一端は千春にもあるのでやむなしだ。
「結婚おめでとさん。お幸せに」
「ありがとうございます」
及川から形ばかりの祝福の言葉をもらい、部長室を出た千春は医局へ向かった。