毒舌な航空自衛官は溺れる愛を捧げたい
「あ、はい……」
見たところ、教官がいつも座っているだろうと思われる一人用のソファーのみしか置かれていなかった。お邪魔してこんなこと思うのは失礼かもしれないけど、普段、人は来ないのだろうか。
座るのが申し訳なくなり、立っていようとも思ったが「もう規律は守らなくて良いだろ」と言われそうだったため、やはり、一人掛けのソファーに座って待つことにした。
さすがは自衛官の部屋ということもあって、綺麗な空間だった。プラモデルはあるものの、物が極端に少ないためかごちゃごちゃして見えない。
「すまん、コーヒーしかなくて」
「あっ、ありがとうございます」
テーブルの上に置かれたマグカップを手に取り、温かいコーヒーに口をつける。緊張していた心が和らいでいくのを感じた。
教官は窓際に体を預けるように寄りかかりながら、コーヒーを飲んでいた。シーンと静まり返る空間で、
「柏はまだ戦闘機好きか?」
静かに問いかけられた。
「え、あっ、はい」
「そうか。その、悪かったな。教訓時代はすげぇキツイこと言ったよな」
「いえ。教官のせいじゃないです! あ、あの、もしかして私がパイロットになれなかったことずっと気にされてたんですか?」
「まあな。俺が教えたのはおまえらだけだし。ずっと柏のことが気になっていた」
「ごくたまに教官から怒られる夢は見ますけど……でも、航学時代のことは、今では良い思い出なんです」