十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!

 こんなに冷たくあしらったっというのに、呆れた表情すらも浮かべずにただ真剣に私を見つめてくる。

 思っていた反応とは違う反応が返ってくるし、真直ぐに見つめられるしで、混乱した私はただ黙って頷いてしまった。

「良かった。家まで送ろう」

 またしても繋がれた手に、体が一気に熱くなる。

 今まで私から腕を取ったりしなければ触れられず、触れてもすぐに触るなと振り解かれていたのに……。

 決して、自分から触れてくることはなかった殿下が自ら私の手を握り締めている。

 近くなった距離感に今にも心臓が破裂しちゃいそう。

 悪役令嬢なのに、どうしてこんなに優しくされているの?

「もう絶対にこの手を離さないからな」

 意味ありげにそう耳元で囁かれ、思わず殿下の方を見た。

 何か決心したような眼差しは力強くて目を逸らす事は許されなかった。


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