敏腕秘書による幼なじみ社長への寵愛
「あまり見境なく遊ばないでね。変な噂でも立ったら大変よ?」

苦言を呈すると、平岡さんが困った顔で私と優介を見比べた。

「注目を浴びるって自覚して、気を持たせるような行動は控えて」
「大丈夫です、珠子さん。女房妬くほど亭主もてないって言いますから」

眉根を寄せる私とは対象的に、優介は顔色ひとつ変えず、なぜか自信ありげな口調で言いのける。

「だ、誰が女房だって? しかも私、全然妬いてないからね」
「そうですか?」

ムッとして語気を強めると、飄々と言い返した優介は頬を弛緩させた。
そして、ポンポンと優しく私の頭をなでる。

「残念。妬いてほしいです」
「は? どうして私が……」

手懐けられるようで釈然としないけれど、私はこの穏やかな眼差しと、手のひらから伝わる安心するぬくもりが大好きだから。二の句が継げなくなる。

「珠子さんは怒ってる顔もかわいいです」
「……っからかわないで!」

優介は私を喜ばせる好意的な言葉をくれる。昔から当たり前のように。

飄然としたその顔を見れば冗談だとわかるのだけれど、思わせぶりだし照れくさくて、心拍数が異常なほど上がり過剰な反応をしてしまう。

「ていうか、怒ってる顔がかわいいなんて変なことを言うのは優介くらいよ」
「変でかまいません。別に他人にどう思われようと、俺は珠子さんに嫌われなければそれでいいので」
「だから、その私が変だって言ってるの!」

私がなんと言おうと柳に風。優介は包容力のある笑顔を浮かべる。
そんな私たちの噛み合わないやり取りを、平岡さんが微笑ましげに見ていた。
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