敏腕秘書による幼なじみ社長への寵愛
午後三時。
上空にかかる厚ぼったい雨雲からしとしとと降り始めた春雨は、次第にその勢いを増している。
大降りの中、優介の運転で私たちがやって来たのは、郊外に近日オープンする大型ショッピングモール、ブルーム。
店舗数はアウトレットを含めて百三十を超える。
ここにミスユーの新店舗を出店するのでその下見と、運営会社である桜木不動産の桜木社長と面会するためにやって来た。
四代目の若社長、桜木修(おさむ)氏はかなりやり手の跡継ぎらしい。
開店前の準備に追われるブルームに着くと、すぐに秘書に迎えられ、私たちは三階の応接室に通された。
「はじめまして、ミスユーの茅原珠子です」
入室し、初めてお目にかかる桜木社長に深々と頭を下げる。
「はじめまして、桜木です。噂通りお綺麗な方ですね」
スリーピーススーツに、シャツもネクタイもストライプ柄と、派手めな出で立ちの桜木社長は初対面の私に軽いノリで言った。
茶髪のミディアムヘアで、顔立ちは濃いめのイケメンだ。
「いえいえ、お上手ですね」
なるべく上品に笑う私の半歩後ろで優介が、能面のような笑顔で見守っているのが想像できる。
今は化けてますけど寝起きはひどかったんですよ、とでも言いたいのかな。
「秘書の沖田です。つまらないものですがお近づきの印に」
持参したワインが入った紙袋を手渡して、優介が控えめな声量で挨拶をする。
「どうもありがとうございます。あ、うちの秘書も紹介しますね」
受け取った桜木社長はそう言いながら振り返ると、背後にいた女性を手で指し示した。
「第二秘書の奥口です」
紹介されたのは、目鼻立ちがくっきりとしたショートカットがよく似合う、美しい女性だ。
優介がロックオンしないだろうかと気を揉んでしまう。
表面上は笑顔で会釈するも、心の中をモヤモヤさせている私を、奥口さんはただ黙って凝視している。
ど、どうしたのだろう?
反応しないので不思議に思っていると、ハッとした彼女が勢いよく頭を下げた。
「すみません!」
「彼女、最近異動で秘書課に来たばかりでね。緊張してて」
桜木社長が鷹揚な笑顔でフォローすると、奥口さんは眉を下げて微笑んだ。
上空にかかる厚ぼったい雨雲からしとしとと降り始めた春雨は、次第にその勢いを増している。
大降りの中、優介の運転で私たちがやって来たのは、郊外に近日オープンする大型ショッピングモール、ブルーム。
店舗数はアウトレットを含めて百三十を超える。
ここにミスユーの新店舗を出店するのでその下見と、運営会社である桜木不動産の桜木社長と面会するためにやって来た。
四代目の若社長、桜木修(おさむ)氏はかなりやり手の跡継ぎらしい。
開店前の準備に追われるブルームに着くと、すぐに秘書に迎えられ、私たちは三階の応接室に通された。
「はじめまして、ミスユーの茅原珠子です」
入室し、初めてお目にかかる桜木社長に深々と頭を下げる。
「はじめまして、桜木です。噂通りお綺麗な方ですね」
スリーピーススーツに、シャツもネクタイもストライプ柄と、派手めな出で立ちの桜木社長は初対面の私に軽いノリで言った。
茶髪のミディアムヘアで、顔立ちは濃いめのイケメンだ。
「いえいえ、お上手ですね」
なるべく上品に笑う私の半歩後ろで優介が、能面のような笑顔で見守っているのが想像できる。
今は化けてますけど寝起きはひどかったんですよ、とでも言いたいのかな。
「秘書の沖田です。つまらないものですがお近づきの印に」
持参したワインが入った紙袋を手渡して、優介が控えめな声量で挨拶をする。
「どうもありがとうございます。あ、うちの秘書も紹介しますね」
受け取った桜木社長はそう言いながら振り返ると、背後にいた女性を手で指し示した。
「第二秘書の奥口です」
紹介されたのは、目鼻立ちがくっきりとしたショートカットがよく似合う、美しい女性だ。
優介がロックオンしないだろうかと気を揉んでしまう。
表面上は笑顔で会釈するも、心の中をモヤモヤさせている私を、奥口さんはただ黙って凝視している。
ど、どうしたのだろう?
反応しないので不思議に思っていると、ハッとした彼女が勢いよく頭を下げた。
「すみません!」
「彼女、最近異動で秘書課に来たばかりでね。緊張してて」
桜木社長が鷹揚な笑顔でフォローすると、奥口さんは眉を下げて微笑んだ。