あのスーツ男子はカクテルではなく土の匂い

 
 翌木曜日。

 会社に行くと、後輩が私の顔をじっと見て、つぶやいた。


 「早瀬さん?メイク変えました?なんか、違うような……」
 
 「え?何も変えてないけど」


 「そうですかあ?なんか雰囲気違いますよね、今日。服は見たことあるけど」
 
 ……いつも同じ服ですみませんね。
 
 「気のせいじゃない?」
 

 「いや、そんなことないかも知れない。僕もそう思うよ」
 
 私の担当営業の日高さんが私を見ながら言った。


 「そうですよね?どうしたんですか、早瀬さん。もしかして……」
 
 「早瀬さんがついに何かに落ちたかな?」
 
 日高さんが笑いながら話しかけてきた。


 「え?何にも落ちてませんよ」
 
 「まあ、いいさ。そのうちわかるよ」


 何が分かるというのかしら?

 確かに、昨日の今日で気分が上がっているのは確かだけど。


 態度に出てる?

 普段そんなに私って暗い?

 色々考えて、仕事に戻った。



 城田さんと会えると思うと毎日が楽しい。

 嫌な仕事を押しつけられても、とりあえずやり過ごすことが出来る。

 気持ちってこんなに違うものなんだといい年して知ってしまった。

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