あのスーツ男子はカクテルではなく土の匂い
Ⅲ
翌木曜日。
会社に行くと、後輩が私の顔をじっと見て、つぶやいた。
「早瀬さん?メイク変えました?なんか、違うような……」
「え?何も変えてないけど」
「そうですかあ?なんか雰囲気違いますよね、今日。服は見たことあるけど」
……いつも同じ服ですみませんね。
「気のせいじゃない?」
「いや、そんなことないかも知れない。僕もそう思うよ」
私の担当営業の日高さんが私を見ながら言った。
「そうですよね?どうしたんですか、早瀬さん。もしかして……」
「早瀬さんがついに何かに落ちたかな?」
日高さんが笑いながら話しかけてきた。
「え?何にも落ちてませんよ」
「まあ、いいさ。そのうちわかるよ」
何が分かるというのかしら?
確かに、昨日の今日で気分が上がっているのは確かだけど。
態度に出てる?
普段そんなに私って暗い?
色々考えて、仕事に戻った。
城田さんと会えると思うと毎日が楽しい。
嫌な仕事を押しつけられても、とりあえずやり過ごすことが出来る。
気持ちってこんなに違うものなんだといい年して知ってしまった。