あのスーツ男子はカクテルではなく土の匂い
 
 早いもので、水曜日になった。

 夜バーへ行くと、城田さんが入り口近くで待ち構えていた。

 私を見てにっこりする。


 それに対して、バーテン君が渋い顔で城田さんを見ている。

 「城田さん。ウチの店を待ち合わせに使うのはだめですよ」
 
 「ごめん。今日だけだ。時間がないんだ」

 
 そう言うと、自分の前に置いてあるカクテルの横に、一万円札。

 「城田さん、多すぎます」
 
 「彼女が飲むはずだったカクテルの分。あるいは適当にボトルキープ入れておいて。君に任せるよ」
 
 ウインクして、バーテン君に頼む。

 びっくり、バーテン君が赤くなってる。

 
 「わかりましたよ。さあ、行って下さい。玲奈さんまたね」
 
 バーテン君が手をひらひらさせて挨拶してくれる。

 城田さんは私の腕をつかむと、扉を開けて私を外に出した。


 「一体どうしたんですか?」
 
 「せっかくだから、僕の仕事を見てもらおうと思ってね。花が好きだと言っていたでしょ」
 
 そう言うと、背中を押される。


 車に押し込まれ、サンドイッチを渡された。バーで出される包みに入っている。

 ランドローバーみたいな大きな車。

 
< 18 / 63 >

この作品をシェア

pagetop