あのスーツ男子はカクテルではなく土の匂い
早いもので、水曜日になった。
夜バーへ行くと、城田さんが入り口近くで待ち構えていた。
私を見てにっこりする。
それに対して、バーテン君が渋い顔で城田さんを見ている。
「城田さん。ウチの店を待ち合わせに使うのはだめですよ」
「ごめん。今日だけだ。時間がないんだ」
そう言うと、自分の前に置いてあるカクテルの横に、一万円札。
「城田さん、多すぎます」
「彼女が飲むはずだったカクテルの分。あるいは適当にボトルキープ入れておいて。君に任せるよ」
ウインクして、バーテン君に頼む。
びっくり、バーテン君が赤くなってる。
「わかりましたよ。さあ、行って下さい。玲奈さんまたね」
バーテン君が手をひらひらさせて挨拶してくれる。
城田さんは私の腕をつかむと、扉を開けて私を外に出した。
「一体どうしたんですか?」
「せっかくだから、僕の仕事を見てもらおうと思ってね。花が好きだと言っていたでしょ」
そう言うと、背中を押される。
車に押し込まれ、サンドイッチを渡された。バーで出される包みに入っている。
ランドローバーみたいな大きな車。