あのスーツ男子はカクテルではなく土の匂い
 
 「動いて腹が減った。肉でもいい?」
 
 「もちろん。私も園内を結構歩いてお腹すいてる」

 そう言うと、行きつけの焼き肉屋さんに連れて行ってくれた。

 大きくはない店だが、マスターが知り合いのようで、奥に通された。
 
 「同級生なんだ。マスター」
 
 「宗吾、素敵な女性と付き合い始めたんだな。初めまして、宗吾の親友の高木です」

 「初めまして。早瀬玲奈です」
 
 高木さんの目を見て、深々と頭を下げる。
 
 「宗吾、良かったな。だから言っただろ。俺は見ただけで大体その人がいい人かわかるって。この人はお前にぴったりだ」
 
 「おい、良介」
 
 「早瀬さん。こいつの仕事に理解のある人がお付き合いしてくれているとこの間聞いて、是非会わせてくれと頼んだんだ。今日は俺のおごりにするから。好きなだけ食べて。その代わり、宗吾を頼むね。こいつ、がたいは立派なんだけど、繊細なヤツでね」
 
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